26/27 リヴァプール補強と財務への影響

※ 2026年10月22日時点の情報に基づく試算記事。移籍金・契約年数・週給は報道・第三者推計ベース。金額は特記なき限りポンド(£)。£1=約190円で換算すると肌感が掴みやすい。

※ 前回記事:2025/26リバプール決算予測


目次

サラー、ロバートソン、コナテが一度に抜けた夏

2026年の夏、リバプールの顔ぶれはガラッと変わった。
サラー、ロバートソン、コナテ。9年間クラブを支えたサラーとロバートソン、そして守備の要だったコナテが、揃ってフリーで去った。監督もイラオラに代わり、開幕から7節を終えた時点の順位は5位(12pt)。

では、この夏の退団及び補強によって財務はどう動いたのか。

先に結論を書いておく。

  • ネット移籍支出は約£200m(固定部分ベース)
  • 選手償却は年約£38m増加
  • 前回記事の予測から、昨季並みの成績(5位+CLベスト8)でも税引前損益は約▲£90mまで悪化する見込み(試算)

主要因としては、頼みの綱だった選手売却益が、昨季の約£116mから約£31mに激減することにある。
そこから逆算して「26/27シーズン、財務的にここは行っておかないとまずいライン」を引いてみることにした


夏の補強

【加入一覧】

選手名Po移籍元金額(報道)契約備考
Bradley BarcolaLWPSG£106m+アドオン最大£17m(計£123m)5年報道クラブ史上2番目の高額
(1位はイサク)
Jérémy JacquetCBRennes£55m+アドオン最大£5m5年+1年OP20歳
1月に合意し7/1に加入
Víctor MuñozLWOsasuna€40m(違約金条項)≒£34.5m6年報道イラオラ体制の初補強
オサスナより加入
Lucca BrughmansGKGenk最大£30m6年18歳
26/27はGenkにローンバック
Ronald AraújoCBBarcelonaローン(移籍金なし)1年間買取OP約€55m(任意)
給与はリバプールが100%負担

※ 金額と契約年数は報道ベース

固定部分だけを合計すると、加入側は 約£224m(バルコラ£106m+ジャケ£55m+ムニョス£34.5m+ブルグマンス約£28.3m)。アドオンが全部満額になれば約£248mまで膨らむ。


フリーで失った金額は大きい

【主な退団】

選手行き先区分
Mohamed SalahTrabzonspor(トルコ)フリー
Andrew RobertsonTottenhamフリー
Ibrahima KonatéReal Madridフリー
Curtis JonesInter€30m+アドオン€5m(≒£26〜30m、金額は報道)
他(Bajcetic、R.Williams、Stephensonなど)各クラブ少額・フリー・ローン

ポイントは「大物3人がフリー」という点。特に進撃のコナテがきつい。アカデミー出身なので、売却額のほぼ全額が利益になるとはいえ、カーティスはもう少し高く売りたかった。
フリー退団は、移籍収入がゼロになる。サラーやロバートソンは功労者でありフリー退団は致し方なし。取得時の移籍金もすでに償却し終えている。帳簿上の損失は小さい一方、売って稼ぐ機会は消えた。

固定ベースの売却収入は約£27m。ここから、ネット支出は約£200m(アドオン満額なら約£220m)と読める。


給与はほとんど浮かない

「サラーとロバートソンが抜けたなら、給与はかなり浮くはず」 ってことで選手ごとの週給×50週で積み上げる。

【給与の積み上げ(週給×50週、£m)】 ※週給はCapologyの推計で、クラブの実際の契約額ではないことは注意

区分内訳(週給)年換算
放出サラー£400k/ロバートソン£160k/コナテ£150k/ジョーンズ£50k/バイチェティッチ£40k ほか(計£810k)▲40.5
加入バルコラ£280k/アラウホ£210k(全額負担)/ジャケ£150k/ムニョス£120k(計£760k)+38.0
新契約による昇給ソボスライ£120k→£320k(+£200k)/ウッドマン+£5k(計+£205k)+10.3
差引+7.7

注目は、放出の節約(約£40m)を、新加入(約£38m)と昇給(約£10m)が上回る点。
放出で一番大きいのはサラー(年約£20m)で、放出全体の約£40mの半分にあたるが、ソボスライ一人の新契約(週£120k→£320k)で年約£10mが増え、サラーの節約分の半分が消える。最近のリバプールは23/24のジロー(フラーフェンベルフ)あたりから若手でも初契約に高給を払うようになった気がする。ルイスディアスとか当時£55kだったし、ジャケもポテンシャル発揮しまくってるからいいものの、£150kはそれなりの金額。ロバートソンも安かった。

26/27の給与(クラブ総人件費)は、前回記事の25/26推計£435mから約£443m。給与比率は約57%で、昨季推計(約59%)より少し下がる程度と予測。


償却は年約£38m増える

次に償却。移籍金は契約年数で割って、毎年費用になる。

  • バルコラ:£106m÷5年=約£21.2m
  • ジャケ:£55m÷5年=約£11.0m
  • ムニョス:£34.5m÷6年=約£5.8m

合計で年約£38m。ブルグマンスは27/28から、アラウホはローンなので償却は出ない。
前回記事の25/26推計(£186m)から、満了分などを引いて、26/27は約£219mと置いた。


26/27の収支:昨季並みで税引前▲£90m

前回予測の25/26(税引前+£10m)から、26/27にどうつながるかをまとめたのが次の表。

【25/26推計 → 26/27試算のブリッジざっくり(£m)】 ※PL放映権と入場料は据え置きで算出(影響小と判断)

項目25/26推計26/27試算差
総収入739771+32
給与(総人件費)435443▲8
その他営業費1901900
EBITDA114139+25
選手償却▲186▲219▲33
固定資産償却等▲22▲220
選手売却益+116+31▲85
金融費用▲12▲18▲6
税引前損益+10▲90▲100

※ 四捨五入のため、合計が合わない箇所がある。

収入は約£32m増えるのに、税引前では約£100m悪化している。
一番大きいのは売却益(▲£85m)。昨季はディアス、ヌニェス、クァンサ、ドアクといった売却が利益を支えていたが、今季は大きな売りが少ない。次に償却(▲£33m)、給与(▲£8m)が続く。

EBITDAは改善しているのに、税引前では約£100m悪化している点だ。

(25/26の放映権収入は£257mと推計したが、実績ベースで組み直すと、PL5位で約£181.8m、CLで£95.3m(The Athletic報道)、合計約£277m。約£20m上振れていた。25/26の実際の決算は、推計より少し良く出る可能性がある)


大会別の「最低ライン」を引いてみる

ここからが本題。「財務的に、ここは行っておかないとまずい」ラインを考える。

先に、この章の前提と結論を3行でまとめておく。

  • 試算の土台は「昨季と同じ成績(PL5位+CLベスト8)」の場合の総収入約£771m。内訳は、PL放映権£181.8m(5位)、CL賞金£95.3m(ベスト8の実績)、商業収入£372m(仮定)、入場料£122m。前回記事の推計£739mとの差+£32mは、放映権を実績ベースに組み直した分(+£20m)と、商業収入の上積み(+£12m、仮定)
  • 規制は、PLのSCR(85%)なら全シナリオで問題なし。UEFA(70%)は、CLで早く負けると超える可能性がある(効くのはPL順位よりCLの成績。ただし超過額は小さく、初回の罰金は数m程度)
  • 現時点の試算では、今季は優勝しても赤字の見込み。PL1位とCL優勝を両方取っても税引前は約▲£34m。規制違反ではなく、借入が増えるという意味での赤字だ。ただし冬の移籍市場(2027年1月)がまだ残っている。選手売却が発生すれば、その売却益の分だけ赤字は縮まり、結論は変わりうる(黒字化に必要な追加利益は、昨季並みで約£90m、完全制覇で約£34m)

以下は、その根拠。まず物差しを、公式の資料で確認。

PL:SCR(Squad Cost Ratio、2026/27から)〔Premier League公式の解説〕

  • 上限は、フットボール関連収入と選手売却損益を足した額の85%
  • 分子は、選手と監督の給与、代理人費、移籍金の償却・減損。アシスタントコーチ、管理・商業スタッフ、女子チームとアカデミーの費用は含まない
  • 85%が「グリーン閾値」。「レッド閾値」は、最大30%の許容枠を足した115%から始まる。3月1日の査定でレッドを超えると、勝ち点6の減点に加えて、超過£6.5mごとに1点の減点
  • グリーンとレッドの間は課徴金(levy)になるが、課徴金が科されるのは2027/28以降の違反から
  • 査定は3月1日、6月、10月。従来のPSRは26/27から適用されない

UEFA:Squad Cost Ratio(2025/26から)〔UEFAクラブライセンス規則2025年版 第93・94条、附属書L〕

  • 上限は70%。比率=(対象者の給与+償却・減損+代理人費)÷(調整後の営業収入+選手売却の純損益)
  • 暦年(1〜12月)の12か月で測る。売却損益だけは、36か月分を12か月に按分する
  • 超過すると、超過額の一定割合の罰金。初回で超過が10ポイント以内なら、超過額の10〜25%。20ポイント超の超過などは「重大な違反」として別扱いになる
  • PL公式も、欧州大会に出るクラブはUEFAの70%を満たす必要がある、と説明している

この物差しで、基本ケース(5位+ベスト8)を測ってみる。SCRの分子は、クラブ全体の人件費(約£443m)ではない。Capologyの週給合計(基本給で約£220m、変動給込みで約£286m)に、コーチ約£15m、代理人費約£25m(どちらも仮定)、償却£219mを足して、SCR 60〜68%。UEFAの70%の内側で、PLの85%には余裕がある。売却益を3年平均(約£67m)で見ると、57〜65%まで下がる。

PL順位×CLの到達ラウンドで、税引前損益とSCRを並べたのが次の図だ。

【図1:PL順位×CL到達ラウンドの税引前損益(£m)とSCR】

読み取れることは4つある。

1. 昨季並み(5位+ベスト8)は税引前▲£90m、SCR 60〜68%。 規制の面では収まるが、損益はまあまあの赤字
2. UEFA 70%を超える可能性があるのは「CLリーグフェーズ敗退(PL2位以下)」「PO敗退(PL4位以下)」「8位以下でベスト16敗退」。 図の太枠。ただし超過額は最大約£25m、初回罰金は約£2.5〜6m。PLは余裕ある
3. 1ラウンド進むごとに約£10〜13m、順位1つで約£4.2m。 収支への影響は圧倒的にCLの到達ラウンドの方が大きい
4. PL優勝+CL優勝の「完全制覇」でも、税引前は約▲£34mの赤字。 

規制より重いのは、損益とお金の面。基本ケースでは、EBITDA約£139mから、ネット移籍支出約£200m(全額即払いと仮定)と金融費用約£18mを引くと、約▲£80m(設備投資と税は除く)。純負債は前回記事の25/26推計£402mから、約£480mまで膨らむ計算になる。移籍金は分割払いのことも多く、資金の出ていくタイミングは後ろにずれるが、赤字を借入で埋める構図は変わらない。PLにはSCRとは別に、資金面を見るSSR(運転資本£12.5m以上、流動性、負債÷資産90%以内)もある。

これを大会別の目標に落とすと、こうなる。

【大会別の最低目標ライン】

大会最低ライン財務上の意味
CL防衛線=ベスト16到達。昨季並みはベスト8リーグフェーズ敗退は税引前▲£127m(5位の場合)で、UEFA 70%超の可能性も(罰金は数m程度)。ベスト16で▲£104m、ベスト8で▲£90m、ベスト4で▲£73m
PL4位以内(死守は5位以内)今季収入への効果は小さいが、27/28のCL出場権が本命。CLは最低約£68m、ヨーロッパリーグは約£20m(低確度の仮置き)。差は£50m級
損益・資金昨季並みで税引前▲£90m、資金▲£80m目安規制の範囲内でも、借入が増える。冬・来夏の売却益で穴を埋められるかが次の焦点
FA Cup財務目標なし優勝賞金£2.12m(FA公式)。数m以内の話
カラバオカップ財務目標なし優勝賞金£100k。スポーツ上の価値のみ

国内カップ2つ、特にカラバオカップはなんせ賞金が小さすぎて、損益にはほとんど影響しない。


売却益を失った26/27は、「CLでどこまで行くか」で決まる

「売却益が激減した今季は、昨季並みでも税引前は約▲£90m。財務的には『PL4位以内+CLベスト8』」

ハリー・ウィルソン、ベン・ギャノン・ドークやモートン、ブリュースター、ライアン・ケント、遡るとアイブとかアカデミーやユース青田買いの選手が売れるのは大きい。売りたくなくなるほど戦力になるのがもちろん理想だが。最近はアカデミーブランドがあると高く売れる印象が強く、特にチェルシーやシティの若手はいい値段が付く。

もちろん、今回の数字は試算であり、週給は第三者推計、給与以外の費用や金融費用は仮定を含む。決算が出たとき、この予測のどこが当たり、どこが外れたかを、またここで答え合わせしたい。


参考:クラブ公式サイト/ESPN/Irish Examiner/beIN SPORTS/Football365/The Athletic(報道引用)/The National(週給一覧)/Capology(推計)/FA公式(賞金)など)

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